家族や介護者など身近な人から不適切な扱いをされて、高齢者の心身の健康が損なわれている状態のことです。
介護の有無に関係なく、自分で考え行動することは、人間として認められるべきあたりまえの尊厳です。介護をされている高齢者の中には、人間としての尊厳を損ない、苦痛を感じていても言葉が不自由だったり、外出できなかったりして周囲に訴えられない場合があります。
また、高齢者虐待のほとんどは家族から受けたり、施設などの閉鎖的な場所で行われたりするため、他人の目が届きにくいものです。
「虐待されている」「もしかしたら高齢者虐待されているかも」と気づいたら、地域包括支援センターまでご連絡をください。
◆ 高齢者虐待の種類
「高齢者虐待防止法」では、高齢者(65歳以上)への虐待は以下のように分類しています。
・殴る ・蹴る ・つねる ・やけどをさせる ・無理に食事を口の中に入れる
・ベッドに縛り付ける ・薬を過剰に与える
・水や食事を与えない
・入浴をさせない ・異臭がする ・髪やつめなどの手入れをしない
・ごみを放置するなど住環境が悪い
・介護や医療サービスを受けさせない
・排泄の失敗を嘲笑する、またはそれを人前で話す
・怒鳴る ・ののしる ・悪口をいう
・子ども扱いをする ・無視をする
・排泄の失敗に下半身を裸で放置させる
・キスや性器の接触 ・性行為の強要
・本人が必要な金銭を渡さない
・貯金や年金など本人の財産を無断で使用する
特に、高齢者が自分の意思を伝えられない場合には、危険な状態になっていることもあります。
高齢者個人のケアプランを正しく理解し、行動しましょう。リハビリを兼ねた日常動作を見守ったり、時には励ましたりすることも大切なのです。
・「夜間のお漏らしが心配だから、水分は飲ませないようにしよう」
⇒適切な水分補給がないと、脱水症状になります。
・「歩くのが大変そうだから、車いすに固定してあげよう」
⇒運動の機会をなくし、身体機能の低下になります。
長時間の固定は、床ずれのような症状になります。
・「同じことを何度も催促するから、聞こえない振りをしてしまう」
⇒無視されて疎外感を感じ、消極的になったり、落ち込みやすくなったりします。
◆ 高齢者虐待の兆候
高齢者虐待は、自覚がない虐待だったり、家庭内で隠密に行われたりするもので、その発見は難しいようです。 さらに、家族や高齢者本人も事実を隠したり、嘘をついたりすることがあります。 高齢者虐待は家族はもちろん近所、地域の関係者が、虐待の兆候を見逃さないことが大切です。 |
高齢者虐待が起こる背景には、介護の負担や経済状況、人間関係、社会環境などさまざまな家庭ごとの事情があります。
また、抵抗ができない高齢者を、介護とは関係のないストレスのはけ口にするケースもあります。
その場合は慢性的な虐待になっていることが多く、早く対処しないと取り返しのつかない事態になる恐れもあります。
「虐待の認識があるのに、虐待をしてしまう」
介護者の負担が大きく心身ともに疲労し、精神的に追い詰められている状況です。
利用できる介護サービスを利用したり、周囲に理解を求めたりするして介護者の負担を軽減できるでしょう。
無理をせず、地域包括支援センターにご相談ください。
高齢者虐待は、虐待を受ける側、虐待をする側だけの問題ではないことも多く、その解決にはさまざまなアプローチが必要でしょう。
◆ 高齢者虐待のご相談窓口
通告は、「虐待の証拠」ではなく「虐待のおそれがある」だけでできます。
このとき、通告者がだれであるかなどの個人情報は法律で守られ、不利益な扱いはありません。
また、通所や入所など介護サービスでも高齢者虐待が起きる可能性はあります。
ただし、虐待とされる身体拘束は、介護において緊急ややむをえない状況では、適切な処置の場合もあります。
高齢者に、傷やあざがあったり、急におびえるようになったり、施設を嫌うようになったりしたら、まずご相談ください。
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